日本文化の価値を国外に伝える前にやっておきたいこと

先日、業者さんと雑談をしていたところ「小林さん、ぜひ、漆器や着物を世界に広めてきてください!」と言われました。

今までにも何度となく「ぜひ〇〇を世界に広めて欲しい」という言葉をかけられるので「なぜ、そう思われますか?」と聞いてみると、「え、えっと・・日本にしか無い良いものだからです。」とのこと。

でも、それって、果たして本当に「日本にしかないもの」でしょうか?
代わるもの、似たようなものと「日本のもの」の違いについて、説明できますか?

 

日本人が良いと思う価値観と、世界で「良い」と思われるかは別

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いつだったか、和菓子の羊かんを作る職人さんたちの団体がパリでの展示販売会を行うために日本を発ったというニュースがTVで流れていました。
この手の「日本から海外へ」という話は、日本人にはとても素晴らしく誇らしいニュースであるようで、たとえばスポーツ選手も海外で勝つと「世界の第一線で戦っている日本人選手」と注目度があがり、日本でも話題となる傾向にありますよね。

しかし、羊かんを作る職人さんたちが、現地で大成功をおさめて羊かんの生産高があがったとか海外輸出量があがったかどうかはその後のニュースでは見かけないですし、そこまで注目している一般の日本人の方はあまりいないのではないでしょうか?

私の周辺の現地へのヒアリングでも、羊かんについては「なにそれ?」という反応ですし「最近パリで羊かんが流行っていますよ」と聞くことはありませんでした。(パリにとらやはありますが)
それどころか
「真っ黒な塊のお菓子なんて、小豆を使ってヘルシーと言われても、正直見た目が気持ち悪くて手が出せないんじゃ無いかな」
「フランスにももっと安くておいしいお菓子は沢山あることを忘れていない?無料のプレゼントなら貰うけど、普通のフランス人はわざわざ高いお金を出して(日本から輸出すると2〜3倍増の値段になる)買わないなぁ」という反応。

うーーーん、多くの日本人が期待している反応より、かなりシビアです。
ただ、これがニュースでは伝わってこない現実ということも知っておくべきと思います。

 

「価値を理解できる」日本人の教育こそ必要では

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「こんなに良いものだから世界で評価してもらえる、もらいたい」という気持ちが先立って相手のニーズに合わないケースもあることを何度か目にしてきましたし、実際にそういう話をよく聞きます。(もちろん成功する事例もありますが)
中には、市場調査もせず「日本で売れないので海外だったら売れるかな」という安易な考え方で失敗する事例もあります。

ed-commonsも日本の住食文化をフランスに紹介するという事業を行っていますが、クールジャパンという言葉に踊らされて伝統や文化を日本国外に紹介し販売すること自体が伝統産業輸出の目的になりつつある昨今、今一度心がけておきたいのが、「その価値、日本人自身が本当に理解できているのか?」と問うことです。
なぜこの文化に価値があるのか、似たような文化は無いのか、それとの違いは?

たとえば「ひろめてほしい」ランキング上位の着物。
先日、「着物は左前右前どちらに着ますか?」と20代の女性に質問したのですが、「さぁ・・わからない」。でもきっと、20代だけでなく、40代でも50代でも自分で着ない方はわからないと答えるかと思います。
知っている方でも「韓国や中国の民族衣装と日本の着物は何がどう違うの?」と聞くと、うーーん・・と。
「着物は良いものだから世界に広めて」と言っている多くの日本人が、実は着物の着方や魅力についてよく知らないのが現状では無いでしょうか。

 

自分自身が非常に痛感していることでもありますが、国外発信の前にそれらをまず日本国内で広め、日本人の中で魅力や価値を共有することが、まずは日本文化や伝統の存続や未来への継承につながっていくものだと確信しています。
そうした思いから、来年は、日本人向けにもこうした学びの場を増やしていこうと思っています。