私が「人が集う 空間づくり」にこだわるわけ

私が、普通のインテリアコーディネーターとは違う、「人が集まる空間づくりの専門家」を名乗るわけとは、大きく2つあります。

1つ目のわけは、コチラ
今日は、ほとんど話したことのない、2つ目のわけについて書きたいと思います。

かれこれ10年くらい前のことになりますが、当時付き合っていた彼氏が都内で居抜き店舗を借り飲食店を開業しました。
そこは、駅と駅のちょうど中間あたりの住宅地エリアで、しかも緑道に面した近隣住民の憩いの散歩道。2坪ほどの小さな居抜き店舗は以前スナックだったとのことで、隣の店舗も地元のおじさんたちが細々と集うカラオケスナック。
過去に商業施設の再開発の仕事に携わっていた私は、前の店舗が閉店した理由と通行人の流れを見て「よほどの仕掛けがあっても難しいな」と感じ、何回か出店場所は慎重に決めたほうがいいと話したものの、当時独立することに夢中だった彼には余計なお節介に聞こえたようです。

 

さらに、
「立ち食い蕎麦屋や牛丼チェーンは数百円でお腹いっぱいの料理を提供している。かたや同じようなファーストフードのラーメン店で千円前後の商品が普通に売れるなんて、消費者をバカにしてない?原価は調べてあるので、自分は数百円で安くおいしい商品をたくさんの人に提供して、有名ラーメン屋のような単価が千円前後の飲食ビジネスに対抗したい」とよく言っていました。
大手チェーン店が価格を安くできるのは、それこそ出店前に入念なマーケティング調査やシミュレーションを行い、広告宣伝にも費用をかけ集客し、材料を大量に仕入れることでコストを削減し、その上で人件費や光熱費などを極力カットして・・・という企業努力があってこそ。
個人経営と大手チェーンでは仕組みが違うということを何度か伝え、友人たちからの「この料理の価格は○○円もらってもおかしくない!」コメントを伝え、価格設定は引き上げることは理解してくれたようでした。
しかし「自分の腕なら地の利が悪くてもきっと客がつく」という根拠のない自信が先に立ち、集客に対しては「自然に行列ができてくれるはず」と超楽観的。今思えば、「商品の魅力を客観的に伝える」「人が来なかったらどうする」など戦略のない不安なスタートだったのだと思います。

 

居抜き物件の設備をなるべく使い、熱心に独自の味を追求し、接客も丁寧。SNSで宣伝したところ雑誌やTVにも取り上げられ、しばらくは順調そうにみえました。
しかし、宣伝に使っていたSNSに味の批判がきたり、近隣住民から匂いや看板の苦情がくるようになると、徐々に彼はストレスを抱えて行きました。店の宣伝に使っていたSNSにもだんだんと意味不明な自虐的な書き込みをするようになり、時折お客様に対して攻撃的な配信をすることも。
友人たちを連れて行けば「義理で来てくれた人は客のうちには入らない」と後で暴言を吐き、かといって、行くよと言ってくれた友人たちがなかなか来ないことに腹を立て、「来てくれないならもう友人じゃない」と携帯の連絡先を消去したり、・・びっくりするくらいに性格が鬱々としていきました。
ついには彼は「自分の店なんだから好きにしていいだろ」と営業時間中お客様が食事をされているのにゲームで遊びだし、趣味のぬいぐるみも店内に増えていき、店舗は「食べにいらっしゃるお客様を迎える空間」ではなくなっていきました。

 

今、自分が経営者の視点で見ていると、よくわかります。
自信をもって始めたのにネガティブな反応が返ってきたことで、全否定されたように落ち込み心を閉ざしたこと。
自分の経営に対して客観的に評価できず、戦略的な改善ができなかったこと。
なによりお客様目線にたった店舗経営ができていなかったこと。

 

彼は精神的に追い詰められていたのでしょうが、もはや何を言っても聞く耳を持たず。
しばらく腫れ物に触るように接していましたが、私たちの関係も終わりを迎えました。
その後は連絡を取っていませんが、お店はどうやら数年後に撤退したようです。

 

ずいぶん昔の話ですが、「集客も、商品開発も、接客も、何も助けてあげられなかった」「お客様が満足できる空間づくりを手伝えなかった」苦く残念な経験が、現在の私の店舗づくりに対する大きな大きなモチベーションであることは間違いありません。

 

今この仕事をしていて思いますが、やっぱり「店を経営する」上で立地は非常に大切です。
名の知れた大手のブランド店でも出店時には多額のマーケティング調査費用を払い、広告宣伝にお金をかけます。
個人で経営する小さなお店であれば、世の中の人にまずは「見つけてもらう」ことからスタートし「興味を持って入店してもらう」ことから「ファンになってもらう」ということがどんなに大変かということは、最初はなかなか実感できないもの。
特に居抜き物件は、初期投資が抑えられるという理由で多くの人が飛びつきやすい物件ですが、要注意。
なにか理由があって撤退したから、居抜き物件なのです。
不動産屋さんや大家さんは、契約時にそのことはあまり言いたがりません。
だから、第三者目線でみた立地のチェックが必要です。
少なくとも「前の店の閉店理由(想像でかまいません)」を10個ほど挙げて、自分の店舗が果たしてそのマイナスポイントをクリアできるかを考えてみましょう。
また、自宅を改築してカフェや店舗にする場合は、駅前や観光地のように自然と集客できる立地なのか、どういう立地なのか、客観的に認識しておくことが大事です。

 

しかし、すべての儲かっている店舗が立地に恵まれているかといえば、そうでもないですよね。
ただ、立地に恵まれていない店舗は、それを凌駕する「来店の理由」が明確にあります。
そう、空間づくりというのはただいい場所にすてきに作ればよいのではなく、集客の仕掛けだったり、独自の商品開発だったり、接客サービスだったり、と多岐にわたります。
空間作りで私がいつも提唱している「時間」「空間」「人間」の「3間」はここで生きてきます。
店舗は、人が集まってはじめて空間として成立するもの。

 

というわけで、人が集う空間づくりをお手伝いしたくて、私の持っている知識や経験を必要としている人に届けたくて、今日も活動を続けています。