「ベルばらとともに」展で学んだ2つのこと

先日、「ベルサイユのばら」で有名な漫画家 池田理代子さんの 「池田理代子 ベルばらとともに」展が日本橋高島屋で開催されていました。
私も子供の頃から「ベルばら」の愛読者でもあり(漫画も所有しています)、大の歴史好きな一面はやっぱり漫画の力も大きいところ。
漫画に圧倒されその世界観にはまりつつ、この漫画はどんな人がどんな思いで描いたのだろう、池田理代子さんってなぜ「ベルばら」を描いたのだろうとずっと思っていました。
事前知識は何年か前に新聞でオペラ歌手になったという記事を読んで驚いたっていう程度でしたが、今回是非行ってみたいと高島屋に行ってきました。

今日は、私が「ベルサイユのばら」展で感銘を受けた2つのことをご紹介します。

 

一つの歴史的事件がオマージュされ蘇ること自体が壮大なロマン

皆さんもご存知の通り、「ベルサイユのばら」は、悲劇のフランス王妃マリーアントワネットの栄光と転落の半生を史実をからめたフィクション(オスカルやアンドレは実在の人物ではありません)です。
歴史的事象でいえば、マリーアントワネットは1770年に14歳でハプスブルグ家からフランス16世に嫁ぎ、1789年にフランス革命が起きてブルボン王朝治世が終わり、1794年にギロチンで処刑された37年間の人生を送っているのですが、ヨーロッパ随一の支配者のあまりに劇的な人生は、時代を経てもセンセーショナルなドラマ。
そしてまた、フランス国家にとってもそれまでの社会が「自由・平等・博愛」のスローガンとともに全く変わっていってしまったターニングポイントともいえる事件。
昔も今も、人々の心をとらえる人物であり、事件であります。

作家シュテファン・ツヴァイクがその悲劇的な生涯を小説にした名著「マリーアントワネット」を「ベルばら」作者の池田さんが初めて手に取ったのが高校生の時。
学校の課題図書として選んだこの小説は、最初は、池田さんに点と点でつながり、そしてのちの人生の中で太い線となり、さらに読者たちに点がはなたれていったことに改めて感動を覚えています。
もちろん、今までに何人ものクリエイターたちが、歴史上の英雄や悲劇の人物を題材を絵画や小説、演劇で語り継ぎ、世の中に残してきています。
数ある歴史的事件の中から、偉大なクリエイターたちの何人かがマリーアントワネットの生涯に惹かれ、その人生を題材にオマージュ作品として挑んだ、その一つが「ベルばら」なのだと思うと、はるかな時を超えた壮大なロマンを感じさせます。(・・熱過ぎます?)

 

「情熱、知恵、努力」は年齢や性別、経験を超える

池田理代子展では、池田理代子さんがなぜ漫画家を志したのか、生い立ちと家庭環境についても触れられていました。
女性が大学に行ったら生意気になると言われた時代に、いったんは好きな音楽の道はあきらめ、学者になりたいという目的をもって東京教育大学(今の筑波大学)に合格したものの、大学進学を許さなかった実家から1年で経済的援助を打ち切られ、生活費を稼ぐために漫画を描き出した苦学生だったのだそうです。
苦労の甲斐あって学生時代に漫画家としてのデビューが決まり、週刊マーガレットで連載を持ち始めました。(連載が忙しすぎて結局大学は中退したそうですが)
25歳の時、高校時代に感銘を受けたマリーアントワネットを主役にした「ベルサイユのばら」の連載開始の際には、編集者から「女の子向けに歴史ものは流行らない」と反対されたものの、「流行らせてみせます」と説得し、その作品は空前絶後の大ブームに。宝塚の演目、TVアニメも大当たりで今や世界各国でベルサイユのばらは翻訳されているそうです。

その後、ヒット作を連発するも、体調不良がきっかけで自分自身を見つめ直し、45歳で音大受験を決意。見事、東京音楽大学声楽科に入学し、現在はオペラ歌手としても活躍されている池田理代子さん。

女性であること、漫画家という職業は、今の私が思っている以上に厳しい歩みであったことと察するに余りありますが、決して、順風満帆とはいかない、むしろ逆風の中で自分の思いや伝えたいことを作品として昇華させる。
ただただ、クリエイターの端くれとして、勇気をもらいました。
きっと、何もかもが追い風だったなら、違った時代だったなら、違った作品が生まれていたかもしれませんし、そもそも違ったアプローチだったのかもしれません。

驚いたのは、池田さんがベルばらの連載を終えてはじめてフランス・ベルサイユを訪れたということ。
その事実に改めて大きな衝撃を受けて、先日あるクリエイターに話したら「それはさ、行ったことがなかったからこそ描けた世界なのだと思うし、その熱が読者に伝わったんじゃないかな」と。
なるほど・・
経験がなくても、むしろ、経験がないからこそ、大事なもの。
うまくは言えないけれど、「情熱、知恵、努力」は年齢や性別、経験すら超えるのだということを改めて思い知った池田理代子展でした。

 

東京の開催は終了しましたが、3月29日〜4月10日までは大阪高島屋でも開催されるそうです。
興味のある方、ぜひ行ってみてくださいね。