私が怪盗ルパンを好きな3つの理由

セルフマガジンにも登場したおかげなのか、「なぜ小林さんは怪盗紳士ルパン(3世ではなく)が好きなんですか?」と聞かれることが増えました。
小学校時代、教室の後ろに並べられたポプラ社の怪盗紳士ルパンシリーズを手に取られた方もいらっしゃるかと思いますが、私もルパンデビューはポプラ社の子供向け小説でした。
成長するにしたがって、偕成社版や創元推理文庫版などの「大人向け」版を読み、子供向け小説の義賊然としたルパンとはガラッと変わって、ルパンの恋愛や悪党ぶりがよーくわかるようになりましたが、それでも依然としてルパン好きでもあります。

好きな理由は沢山ありますが、大きな理由を3つにまとめてみました。

 

色褪せない、珠玉のミステリーである

出典:https://arsenelupinetlesautres.wordpress.com/2013/11/29/arsene-lupin-gentleman-cambrioleur-1905-1907/
ミステリー小説、推理小説ともいうべきジャンルのフロンティアともいうべきルパン小説。
ルパンは長編小説よりも短編集の方がミステリーとしての完成度が高く、記念すべきルパンの1作目のストーリーのタイトルは「ルパン逮捕される」(L’ARRESTATION D’ARSÈNE LUPIN)という、国際船の上での犯罪で、しかもルパンの一人称で語られます。
「僕」と語る主人公が船での犯罪に巻き込まれ、犯人探しをするうちに魅力的な女性と恋に落ち、最後下船する際に逮捕される・・・という衝撃的な展開は当時センセーショナルな作風だったでしょうし、やっぱり何度読んでも斬新だなぁと感心します。
他にも、短編集の8つの冒険譚が最後の短編で一つにまとまり、短編集が一つの長編小説のような体の「8点鐘」(LESHUIT COUPS DE L’HORLOGE)という小説も、およそ100年前の作品なのに今でも色褪せないよく使われるトリックが使われたりと、今日のミステリー小説のジャンルを築いた礎であることは間違いありません。
ちなみに、かの有名な江戸川乱歩もルパン小説のオマージュというべき作品をいくつか発表しています。

 

ワルからにじみ出る人間臭さ

子供向けのポプラ社シリーズのルパンははっきり言って「義賊」。
愛国心に溢れ、抜群の知性と行動力で敵に立ち向かい、女性や子供に優しく、人殺しは絶対にしない。
・・と思い込んで大人版を読むと、、まぁ幻滅です。
今まで大人向け小説を読んだことのない方は、特に女性は、ショックを受けること必至。
毎度毎度ひどい女たらしで、自信家で、傲慢で、皮肉屋で、そしてズルい!
だからこそ話がおもしろくなるのだと大人の私は納得するわけですが、子供の頃にありのままを知っていたら「なにこのおじさん、最悪〜!おまわりさん、早く捕まえてください〜!!」と思ったに違いありません。
でも、この人間臭さが彼の魅力なのです。決して万能なスーパーマンではなく、時に殺人事件の犯人を愛して殺してしまったり、口説いた女性にまんまとフラれたり、仲間の奥さんに手を出してしまったり、アフリカのとある地域の王様となったり、お宝は横取りしたり・・と突っ込みどころ満載の生き様が思わずニヤッとしてしまう、愛すべきワル(近くにいたら迷惑でしょうが)であります。

 

実際の地名がよく使われる

地理好きな私としてはこれはかかせません。
パリは100年以上前に市内の改造を行い、地名や地形が100年前とあまり変わっていないのですが、実際の地名や通りの名がよく出てきます。(もちろん小説上のみの架空の地名も沢山存在しますが)
なので、セーヌ川沿いのパッシーという地名の川べりに行けば「ここらあたりに巨大な金塊が埋められて隠されていたんだな」とか、ラサンテ刑務所から小説で彼がたどった脱獄の逃走経路を歩いたりなんてこともできるのです。

余談ですが、「奇岩城」(L’AIGUILLE CREUSE)というルパン小説の奇岩は、実際にノルマンディー地方のエトルタにある岩がモデルで、映画にも使われました。このエトルタには、ルパンミュージアムがあります。もともとは作者のルブランの家だそうで、私もわざわざルパンミュージアムと奇岩が見たくて現地まで列車とバスを乗り継いで行ったことがあります。


出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Etretat_(falaise_d’aval_et_aiguille).JPG
私は池波正太郎の剣客商売も大好きですが、実際の地名が出てくる鐘ケ淵や四谷に行ってももはやストーリーを彷彿とさせる手がかりもなく、そういう意味ではパリは、ルパンの物語をある程度たどれる街でもあります。

 

あまりアルセーヌルパンになじみのない方向けに、近いうちに小説に沿った熱い(暑苦しいともいう)パリ案内ができたらと思います。