名前が読みにくいワインもイチコロで買わせる、ストーリーの魔力

上は先日電車の中でみかけた、チリ産のワインの広告です。
あ、どこかで見たな・・と思った方もいるのではないでしょうか。
 
 
このワイン、スペイン語で読みにくく変わった名前です。
「カッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)」
このワインを初めてみたとき、フランス語を学んでいる私は最後の単語に「ん??」となりました。
フランス語で悪魔を意味するDiableに非常に似ていたからです。
(文字の綴りだとわかりませんが、発音してみると、英語のDevilにも少し似た感じですね)
日本語だと「悪魔の蔵のワイン」という意味だそうです。
 
 
悪魔の蔵のワインだなんて、なんだかおそろしそう。
そんなに飲みたくないですよね。
でもこのワイン、実は、2年で売上が倍増した、ワイン業界でも話題のブランドなんです。
ちなみに2018年の日本のワイン市場は今やフランスワインではなく、コストパフォーマンスがよく飲みやすい味わいのチリワインがシェアNo.1です。
(出典:「メルシャンのチリワイン主力ブランド、2年で売り上げ倍増」ITmediaビジネスオンライン)
 
 
今日は、この名前が読みにくく奇抜なワインが売上を驚異的に伸ばしている理由を、広告からひもといていきたいと思います。
 
 

インパクトのある名前には、そこにいたるストーリーがあった

この広告をよく見ると、このワインの味や品質、金額については具体的には語っていません。
ただ、以下のことが問わず語りのように語られています。
・チリの名門ワイナリーには最高のワインを貯蔵しておく特別な蔵があった
・その特別蔵にはあんまりにも美味しいので盗み飲みをする者が続出した
・困った創立者が「この蔵には悪魔が棲んでいる」という噂を流したところ、盗み飲みがやんだ
・この特別蔵はのちに「悪魔の蔵」と呼ばれるようになり、今だにワイン蔵として使われている
 
なぜこのワインがこんなインパクトのある名前がついているかという名前の由来を語っているだけです。
たしかにとても興味をそそられるストーリーですが、なぜこの商品が欲しくなるのでしょうか。
 
 

第三者の感想がたくみに盛り込まれている

コトPOPの手法として、「第三者に味や使い勝手の感想を語らせる」というものがあります。
お客様の心をつかむコトPOPで重要な3つのコト
 
たとえば、「我が家の子供たちが大絶賛のカレー」とか、「化粧水国内シェアNo.1!」といった「第三者の評価」は、POPを作成したスタッフ(=店員=売りたい気持ち満々に感じられる)の気持ちやアクションではなく、あくまでユーザーの自然な評価。
商品が客観的事実に基づいて語られると、お客様には押し付けられた印象もなく自然に興味を抱いてくれます。
 
そこで、この広告に戻ると、
・この語りは全て第三者が語っている
・盗み飲みをするものが後を絶たなかった=美味しいからこその人々のリアクション
・悪魔が潜んでる蔵という噂まで流して蔵のワインを守った=そこまでやらないと守れないという蔵主のリアクション
・悪魔が棲んでる蔵という人々が畏怖の念を抱いた=想像を絶する特別感がハンパない
という印象が読み取れますよね。
ここまで読むと味についてほとんど説明されていないのにかかわらず「どんな味なのだろう、どれだけ美味しいのだろう」という期待感が生まれます。
 
 

覚えやすいニックネームで検索させる

上の2点があったとしても、電車の中でみた広告から、実際に購買に結びつけるのはなかなか難しいもの。
しかも、カッシェロ・デル・ディアブロなんて長くて覚えにくい名前ですから、電車を降りた途端に忘れてしまいそうです。
そこで、最後の2行。
「スペイン語で”悪魔の蔵”を意味する」
文章の最後に書いてあることで、名前を覚えていなくても、インパクトのある「悪魔の蔵」という単語が人々に刷り込まれていきます。(まさに悪魔的な心理作戦!)
名前を覚えていなくても、悪魔の蔵っていう名前の由来は覚えています。
広告をみて携帯で「悪魔の蔵」って検索させたらもうこっちのものですよね。
そのままインターネットでも購入できますし、週末のスーパーに行ったときに「悪魔の蔵」というPOPがあったら「ああ、これこれ!広告でみて飲んでみたかったんだよね〜」と手が伸びる、という仕掛けです。
悪魔の名前にふさわしい、誘惑の魔力がある広告ですね。
 
 
いかがでしたか。
数あるワインの中でも、名前が読みにくい商品でも、味を伝えにくい商品でも、手に取るまでのストーリーを仕掛けることで、商品が魅力的に際立つということを覚えておきたいものです。