闇があっての光 伝統的な日本の光の考え方

みなさんこんにちは。和の空間コーディネーター ed-commons小林です。
自宅に和のエッセンスを取り入れたいみなさんに和の空間をご紹介しています。

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ハウスメーカーのインテリアコーディネーター時代から、お客様に照明器具のご提案をしています。
各照明メーカーのカタログから、お客様のインテリアにぴったりの照明器具を探し出しご提案するわけですが、その中でお客様からご要望が多いものとしては「間接照明」です。
今日は日本の間接照明の主役ともいうべき、行灯(あんどん)についてご紹介します。
 
 

行灯とは

行灯というのは、江戸時代に普及した日本の照明器具の一つです。
木や竹、金属などで枠をつくった構造体に紙を貼り、風邪で炎が消えないように作られています。
昔は中央の皿に油を入れて木綿等の灯心に点火して使っていました。江戸時代は蝋燭は高価だったため、菜種油などが使用されていました。
柱にかけたり、手に下げて持ち歩けるものもあります。提灯なども行灯の一種ですね。
 
 

日本の文化と行灯

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昭和8年に日本を代表する作家谷崎潤一郎が名著「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」の中で日本古来の美的感覚について多くを語っています。
 
 
ー古来より日本の文化には、闇があってこその光・・闇と光があやなす陰影の微妙な濃淡を無限の色彩を作り出し、闇と光が作り出す陰影のゆらめきが日本の文化を作り出していた。闇こそが美しい光を支え、重い暗さが羽根のように軽やかな明るさを支えている。
ゆらめく蝋燭の火が行灯や障子を通して薄暗くほんのりとあたりを照らし、その陰影のゆらめきの中でみるおしろいや紅で化粧した女性の肌の美しさを際立たせ、漆器などの調度品の繊細な色合いにイマジネーションや神々しさを感じるような空間こそが贅沢であるー・・
 
 
その中で、行灯は、人々に暗がりの闇からほのかな間接的な明かりの中でゆらめきや想像力を生み出させ、日本の闇を情緒的に彩った生活文化の一つでした。改めて日本人のもっていた価値観や感性に脱帽です。著書の中で、谷崎潤一郎は、闇と光に幻想的で豊かな空間をみていた古来からの日本人の独特な価値観が、電球の登場などで味気ないものに変わりゆく事を嘆いています。
 
 

当時の日本は、文明開化の明治時代から欧米諸国に追いつけ追い越そうと必死に近代化を進めていた頃で、それは、同時に日本人が古来より大事にしていた美的感覚を根底から覆すような価値観の移り変わりの時代でもありました。
ちなみに、谷崎潤一郎の生きた時代ですら、理想と言われた光環境は現在の基準の1/5程度と言うのですから、明治以前の日本の夜は現代人がびっくりするような完全なる漆黒の世界だったのでしょうね。
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明治以降、日本人は明るさを豊かさの象徴と見なし、明るさに便利さや安心感を求めてきました。
「闇」という存在を消し去り、日本に長らく息づいて来た闇の美意識も変えてしまいました。室内には照明設備が整い、24時間営業のコンビニから漏れてくる明かりや深夜の道路を照らす照明の数々。全てが明るい夜。現在は、日本だけでなく世界中が夜の明るさを追い求めています。衛星からの地球の映像では、夜の闇の中であっても光がきらめく大都市の光景が東京をはじめとして世界各地で見られます。
 
 

現代の生活に取り入れたい行灯の価値

戦後、さらに「全てを明るく」を目指した日本の照明ですが、その代わり「明るすぎて疲れてしまう」という声もあがるようになりました。かといって、現代の便利な文明社会ではもはや明治以前のような生活は難しいですよね。
 
 
そこで、現代の建築の考え方では、強く直接の光の他にほんのりと暖かさを生み出すような間接照明の生活を見直そうという動きが活発になっています。間接照明とは、直接の光ではなく、光源が視界に入らないように光を屈折させて壁や天井に当てる照明技法です。
 
 
また、寝る前の一時間前に室内の照明の明るさを落とし、ほんのりとした明かりの中でリラックスして過ごすという生活スタイルも出てきました。段階的、あるいはグラデーションで光を調節できる照明器具も人気です。
また、行灯に近い間接照明のルームライトもありますので、そういった照明器具もおすすめです。
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ed-commonsでは、現代の暮らしにとけ込むような行灯づくりのワークショップを不定期で行っております。
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LEDの光を使って、ワーロン紙と呼ばれるプラスティック製の障子紙を木枠に貼り付けていきます。
スクエア型の小型の照明は持ち運びも簡単で、重ねて使ったり、棚にちょこんと置いたりすることで簡単に行灯ライフが楽しめます。
先日ワークショップに参加いただいたお客様は、お子さんの枕元に毎晩行灯を置いて、寝付くまで行灯の光をともしているそうです。
和風和風しないでシンプルモダンな空間にも使えますので、外国へのお土産にも役立ちます。
 
 
次回の行灯づくりワークショップの日程が決まりましたらまたご案内させていただきますね。
たまに、行灯の光の中で夜を過ごしてみると、日本人が古来より大切にしていた、ほんのりとした豊かな時間を過ごせてリラックスできるので、おすすめですよ。